フジファブリック全曲解説「MUSIC」

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駆け抜けるように書いたフジファブリック全曲解説シリーズもこれで一段落してしまいます。終わってしまうようで寂しいけれど、これは延長線上の一点に過ぎないのだと思いたいし、このアルバムもきっとそうなのです。”フジファブリック“5thアルバム「MUSIC」。

「MUSIC」全曲解説

Spotify

MUSIC, an album by Fujifabric on Spotify…

2010年7月28日リリース。2009年12月24日に急逝したVo.志村の残した楽曲を金澤ダイスケ、山内総一郎、加藤慎一、刃田綴色で完成させたアルバムであり、フジファブリックの想いが詰まったアルバム。フジファブリックを語る上で最重要と言っても過言ではないアルバムです。

志村が残したと言っても、デモ音源であったり、志村のメモ書き程度の歌詞とメロディであったり、完成からは程遠い状態からこれほどまでに完成度の高いアルバムを作ったことは驚異的と言う他ありません。残されたものの想いが詰まっていると言えるでしょう。

今作に志村との共作詞や他メンバーの作曲、ボーカルが多いことはその象徴です。

正直、ただの受け手に過ぎない僕では与えられる情報に限界があります。この記事を読んだ後に、どうか今一度このアルバムを聴いていただけると幸いです。

1.MUSIC

かき鳴らすような、駆け抜けるような、アコースティックギターが止まらない曲、「MUSIC」。志村のボーカルに寄り添うようなコーラスワーク、楽器のサウンドはこのアルバムを象徴するようです。

音の厚みが凄まじく、フジファブリック全体を感じられるような曲です。けれど、ドラムの音は入っていません。正真正銘フジファブリックのメンバーだけで演奏された曲です。終わり方は唐突に途切れるような、残響音が空しくも爽やかに染みわたります。

興味深いのは歌詞ですね。これもまた『あの人』に向けられた曲ではありますが、志村の心境の変化を感じます。

枯れ葉が舞い散ってる秋は
君が恋しくなる
記憶の中にいる君は
いつだって笑顔だけ

志村の中の『あの人』はいつも泣いていました。にも関わらず、この曲では笑顔になっている。

これは前々作「TEENAGER」で過去と向き合い、前作「CHRONICLE」で今の自分と向き合ったことで前を向けるようになったということでしょう。これで志村は『あの人』に対して苦しむだけではなくなったのです。忘れることはないけれど、前向きになれた。

そんな心境でも急逝してしまうのだから、神様は残酷です。

冬になったって 雪が止んじゃえば
澄んだ空気が僕を 包み込む

2. 夜明けのBEAT

掛け声「いち、にぃ、さん」で始まる、「夜明けのBEAT」。「モテキ」の主題歌としても有名になりました。ちなみに掛け声は志村のものではなくDr.刃田のものです。

後半のギターソロは志村が弾いたものであり、彼もボーカリストでありながらギターが好きな人間だったのだなと思わされる音です。「僕も中々良いギターを弾くだろう?」なんて笑う姿を見て、デモ音源である志村のギターソロをそのまま採用しました。

バクバク鳴ってる鼓動 旅の始まりの合図さ
これから待ってる世界 僕の胸は躍らされる

何度も繰り返し歌われる歌詞、おそらく志村はこの時非常に前向きな状態だったのではないでしょうか。上述したように、『これから待ってる世界』を見る姿は以前までの志村にはなかったものです。志村が生きていたら次はどんな音楽を作ったのだろうか、どうしても考えてしまいます。もっと彼の曲が聴きたかった。

3. Bye Bye

PUFFYに提供した楽曲のセルフカバー、「Bye Bye」。愛のあるMCが好きでこの動画をよく見ます。フジファブリックの音源を聴いてほしいですが、誰かが志村の事を話している動画も見てほしい。

シンセサイザーの音、キーボードの音が目立ちます。Key.ダイちゃんの功績が大きい曲であり、志村の『あの人』への想いが直球で表現されている曲です。この曲を聴くといつもたまらない気持ちになります。

君がいなくても こちらは元気でいられるよ
言い聞かせていても 涙が出るよ

『あの人』を想って『涙が出る』と表現するほどに素直になれた曲です。志村は前向きになったことで素直になれた。「記念写真」の時もそうですが、PUFFYへの提供・Gt.山内作曲のように自分の曲ではないと考えた時、志村はいつもより素直になります。

「愛」は何だい 分からない
分かるもんなら困らない 手はもう離してしまった

問い続けても分からなかったのでしょう。『愛』が一体何なのか、志村にとっての永遠の課題だったのかもしれません。彼は最後に答えを手にすることができたのでしょうか。それは志村にしか分からないけれど、救われてほしいと願うばかりです。

4. Hello

イントロのサウンドに引き寄せられるような曲、「Hello」。フジファブリックらしさの新境地だと思っています。今までの曲よりも打ち込みサウンドでありながら、随所にらしさを感じる曲です。

これを聴くと、「フジファブリックは変わり続けていくのだな」と感じさせられます。彼らが求める音、表現したいものは常に変わり続けて、だからこそ変化を恐れないのだろうと。それもまた前向きと言えるでしょう。

並んだビートでばっちり
乗って行けたらいいのに
あの頃の記憶はぼんやり
まだ覚えているから

この曲もまた『あの人』を想った曲です。並んで前には進めなかった。けれど、『あの頃の記憶』を想いながらも別々の道へ前進はしているのです。

男女の仲というものは難しく不安定なものです。幼い頃から刻み込まれた固定概念が、周囲の目が、自分自身が邪魔をする。けれど、大切だという気持ちはたとえ男女間でも存在するのではないでしょうか。お互いに大切で、自分の中で大きな存在だと認識し合っていながらも離れ離れになってしまう。それでも大切だという気持ちは変わらない。形ではなく心こそ大切なのでしょう。

遠くにいる君まで 届けられたら良いな
歌うよ君の方へ 届けられたら良いな

願うように前を向く志村を見ると、そんなことを考えてしまいます。

5. 君は僕じゃないのに

ピアノが寂しくも染み渡る曲、「君は僕じゃないのに」。一見するとそぐわないようなギターの歪みが絶妙なバランスを演出しています。

ああ君は僕じゃないのに ああ僕は君じゃないのに
求めてしまう気持ちは わがままというのでしょう?
明日 街が晴れたなら 僕は傘を畳んで
深緑の服を着て 君に伝えに行こうかな

『あの人』を想った曲だと考えていますが、そうならば『明日君に伝えに行こうかな』とはならないかなとも思います。志村の普遍的な悩みなのではないでしょうか。

上述したように『愛は何だい』と考えるような志村は、きっと相手から理解されないことが多かったのでしょう。自分でも理解できないのだから当然です。当然ですが、それでも理解してほしいと思ってしまう。それはわがままかもしれませんが、分かってしまう。

余談ですが、志村は深緑の服がめちゃくちゃ似合うと思います。

6. wedding song

志村が結婚するマネージャーのために作った曲、「wedding song」。多幸感溢れる曲であり、志村の優しさが詰まっている曲です。

誰かのために曲を作るということがほとんど無かったのではないでしょうか。この曲の雰囲気、歌詞は実に直球で素直です。

おめでとう そしてこれから 待っている素敵な日々
お二人で過ごす日々に笑顔あれ

7. 会いに

Gt.山内が歌った曲であり、新体制のフジファブリックを想像させる曲、「会いに」。志村のボーカル音源もなく、メロディと『会いに行くよ』という歌詞のみが残されていました。この曲を必ず完成させるという強い意志が新フジファブリックへの原動力になったのではないかと思います。

志村の立ち位置である中心が空席になっているこの映像を見ると、一体どれほどの困難と覚悟の上で今のフジファブリックが成り立っているのだろうかと考えてしまいます。歌詞が志村、Ba.加藤の共作であり、ボーカルがGt.山内であるこの曲を歌うと決めてくれて本当に良かった。

まとまっていないけれど 届けてみたいから
君のいる所に会いに行くよ 会いに行くよ
君の住む街に会いに行くよ
君に言葉持って行くよ

『まとまっていない』のは当然。志村の死を悼み、彼を想う気持ちは残された人を苦しめたでしょう。それでも前を向いたのです。覚悟を決めたのです。自分が歌うと決心した山内の気持ちを考えると、新フジファブリックの良さが分かります。

コンパス指さない地図なんだけど 迷ったりしないよ

8. パンチドランカー

前作までのフジファブリックらしさを考えれば一番”らしい”曲だが、今作の中では不思議と異物感のある「パンチドランカー」。鳴っている音の主張が激しい。どのパートもしのぎを削って鳴っているようで、フジファブリックと言うバンドの力強さを思い知らされます。格好いい。

駆け抜けるどころか全力疾走です。格好いい。この音源が無いのが残念で仕方ないです…。

今作の音源はYouTubeに無いものばかりです。この記事を見に来てくれるような皆さんはおそらく音源をお持ちだとは思いますが、もしも持っていなければ買ってほしい。このアルバムは手元に置くだけの価値があります。

9. Mirror

Gt.山内ボーカル、作曲の曲「Mirror」。作詞は志村です。

君が君の中の僕を見て
僕は僕の中の君を見る

「君は僕じゃないのに」に通ずる観点での『君と僕』の歌詞です。志村は自分をありのままに理解されているとは思えなくて、そのことにいつも苦しんでいたのでしょう。自分も同様に誰かをありのままに理解することはできず、所詮自分の中にある姿でしかない。

鏡に映る姿のように、それは実像ではないのだと考えていたのでしょう。

きっと志村正彦という人間は誰よりもロマンチストでありながら、現実を理解してしまうほどの賢さも持っていた。それは志村にとって不運と言う他なく、僕らにとって幸運なのです。もしも彼が愚かならば、僕らがフジファブリックに出会うことはなかったでしょう。彼の苦しみの上に成り立った曲を僕らは享受しているのです。

フジファブリックに限ったことではなく、自分を削って音楽を作っている人々の曲は全て同じことが言えます。だからこそ、僕は表現者を尊敬しているし、少しでも力になれたらと思うのです。ryu’sを通じて彼らを支えられたい。皆さまと彼らを繋げたい。繋がりのきっかけになれればと思うばかりです。

10. 眠れぬ夜

志村が何年も前から温めていた曲、「眠れぬ夜」。この曲を語ることが志村を語ることであり、フジファブリックを語ることだと思っています。この曲への想いは「好きだ」とか「感動する」だとか、そんな言葉では足りない。アウトプットしきれないほどに、胸がいっぱいになる曲です。

バンドとして初めてストリングスを入れていることが特徴ですね。それによって壮大な曲になるとともに、各パート、特にギターソロのサウンドが際立っています。

ストリングスと言えばメジャーデビューしたバンドが導入しがちなイメージですが、この曲では効果的かつバンドの邪魔にならない絶妙なバランス感で導入されています。担当したのはKey.ダイちゃん。彼の功績は本当に大きいですね。縁の下の力持ちという言葉がぴったりです。

志村の苦しみを感じてしまう曲であり、彼の哀しさが詰まっています。

また今夜も眠れぬ夜になりそうな気がした
部屋の壁の色褪せ方が気になる今日この頃

彼は不眠症だったのでしょう。彼が様々なことに苦しんでいることは何度も書いていましたが、それは彼の睡眠にも影響していました。眠らなければ人は死んでしまう。

もういいだろうと 意味は無くとも
君の声を聞きたくなる

「タイムマシン」でも書きましたが、志村は『あの人』に対して『君の声を聞きたい』と考えています。それが精一杯であり、それ以上でも以下でもない。『あの人』に対して前向きでいられたとしても、苦しむことは変わらなかったのでしょうか。眠れぬ夜は『あの人』のせいなのか。

そしてできれば 何より君に先ず
伝えたい事がある
嫌がられる程何もかも
さらえてしまえたらいい

『君の声を聞く』ことができたならば、彼は初めて『伝える事』ができる。『あの人』への想いを『さらけてしまいたい』と考えていたのです。それを喜んでほしいと思うのでもなく、『嫌がられる』と捉えているのが何とも志村らしい。

また、彼のボーカルは批判されがちであり、彼自身も「ボーカルを頑張らねければいけない」と話していたそうですが、このサビの終わりの高音は凄く美しいと思います。彼は決して下手ではなかった、そして頑張っていた。彼の歌が大好きです。

悲しまなくてもいい

歌詞には含まれていないこの部分は、志村が偶然遺したものであり、メンバーとスタッフが話し合って音量を上げて曲に取り入れました。まるで志村の死を想起するようなこのメッセージがなければ、僕らはフジファブリックを受け入れることができなかったでしょう。志村の死を受け入れることができなかったでしょう。永遠など無い。だからこそ僕らは受け入れなければいけないのです。

曲の終わりには『結構いいんじゃないかな、うん』と話す志村の声が聴こえます。僕らが聴ける最後の言葉。


まとめ

ついに、書き終えてしまいました。これにてフジファブリック全曲解説は一段落します。当初は現在のフジファブリックが志村を想って作った曲についても解説しようと考えていましたが、それは野暮なのではないかと。

僕が志村を大切に思っている以上に、バンドメンバーは志村を大切に思っている。ならばせめて、この世で一番身近な存在だった彼らの言葉を、そのままに受け止めたいと思います。志村時代、新フジファブリックと分けて考えてしまうのは仕方ない。それでも、フジファブリックはずっとフジファブリックなのではないでしょうか。

フジファブリック全曲解説への反響が大きいことに驚くとともに、心から嬉しく思っていました。これからもryu’sを見ていただけたならばと思うばかりです。ありがとうございました。