フジファブリック全曲解説「TEENAGER」

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今日は”フジファブリック“3rdアルバム「TEENAGER」。

「TEENAGER」全曲解説

Spotify

TEENAGER, an album by Fujifabric on Spotify…

2008年1月23日リリース。個人的にはフジファブリックのアルバムの中で一番完成度の高いアルバムだと思っています。フジファブリックらしさとPOPさのバランスが絶妙で、どの曲を聴いても好きになってもらえるようなアルバムですね。

1.  ペダル

イントロの雰囲気が素敵すぎる、「ペダル」。幻想的な雰囲気の中で優しく響くアコースティックギター、志村の歌声が胸の奥に染み込んでいき、バスドラムが足音のように静かに鳴ります。

フジファブリックの曲の中でも珍しい熱量の曲ですね。聴いていると落ち着く自分と、ギターに煽られて高揚していく自分が混ざり合います。

後半のギターソロも格好いいのですが、その裏で盛り上げているベースのメロディがまた素敵です。

全体的に綺麗な情景描写をした歌詞ですが、その中でも

何軒か隣の犬が僕を見つけて
すり寄ってくるのはちょっと面倒だったり

という志村らしい心理描写が好きです。どことなくやるせなさを感じさせます。やるせなさと取り戻せない過去、その美しさは志村の歌詞の魅力ですね。

2.  記念写真

「水飴と綿飴」に続くGt.山内作曲、「記念写真」。山内の曲らしい爽やかさに志村の歌詞の美しさが合います。志村の曲と山内の曲を比較されることも多いですが、僕としてはどちらにも良さがあると思います。山内にしか出せない透明感に初めて触れたこの曲が凄く好きです。

ギターのツインリードが楽しい曲ですが、個人的には美しいキーボードの音が好きです。山内の曲の透明感にぴったりの澄み切った美しい音。

サビの歌詞はユニコーンの名曲「すばらしい日々」のオマージュでしょう。志村にとって憧れである”ユニコーン”のエッセンスを自分の曲ではなく山内の曲で入れてくるんですよね。

今回のアルバムでは”ユニコーン”のプロデュースをしていた「河合マイケル」がプロデューサーになっていることからも、随所に”ユニコーン”へのリスペクトを感じます。

記念の写真 撮って 僕らはさよなら
忘れられたなら その時はまた会える

すばらしい日々だ 力あふれ すべてを捨てて僕は生きてる
君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いに行ける

忘れること・別れることで前に進むことができるという考え方をやるせないと思う人も、前向きだと思う人もいるでしょう。『あの人』を忘れられない志村が学生の頃に「すばらしい日々」を聴き、そして「記念写真」を歌っているのだから、きっとやるせなさと前向きであることは両立するのではないでしょうか。

3. B.O.I.P.

同様にGt.山内作曲、「B.O.I.P.」。意味は「バトルオブイノカシラパーク」。どのパートも印象的なリフが鳴り続ける中で志村の歌声が一番目立つという絶妙なバランスの曲。

サビ前の『すり抜けろ!』のコーラスワーク、サビの「モーレツ」に合わせたドラムなど、随所に刺激がある。

激しさを増す戦場 燃え上がった感情
降り注いだシャワー 二人三脚でケンケンパ

この歌詞の語感は凄く志村らしい語感だと思います。はねるでもなく、食い気味でもなく、なのに口ずさみたくなる不思議な語感です。

4. 若者のすべて

言わずと知れた名曲であり、もっと多くの人に知って欲しい名曲、「若者のすべて」。Bank Bandでカバーされたことにより有名になりました。桜井さんの歌声は大好きですが、この曲に関しては志村が一番似合うと思います。

フジファブリックの代表曲でありながら、「TEENAGER」の中ではやや異質の曲だと思います。下手するとフジファブリックの中でも異質。と言うのも、綺麗でまとまりがあり過ぎるんですよね。今までは趣のある良曲が多かったのに対して、曲の完成度が高過ぎる。

完成度と言う意味では歌詞が特にそうですね。

真夏のピークが去った 天気予報士がテレビで言ってた
それでもいまだに街は 落ち着かないような 気がしている

このAメロだけで曲全体の雰囲気が伝わります。夏の暮れ独特の浮ついた空気感が目に浮かぶようです。歌詞のどこにも『あなた』『あの人』という言葉はなく、最後に一度だけ『僕らは変わるかな』とあるだけで、どうしてこんなにも胸が締め付けられるような気持になるのでしょうか。日本語の美しさを感じる曲だと思います。

正直この曲について語るのは野暮な気がしていて、きっと皆さんの中でも大切な曲で、その解釈も思い入れも多種多様だと思います。全曲解説などと大それたことを言っていますが、僕も皆さんと同じようにフジファブリックが好きなだけの人間です。この曲に答えはありません。大好きです。

5. Chocolate Panic

アウトロの暴れ方がライブ映えする「Chocolate Panic」。こうして見ると本当にメンバー全員の演奏力が高いですね。コーラスワークの美しさといい、ハイスペック集団です。

この曲は「TEENAGER」の完成度の高さの象徴だと思っています。正直歌詞やメロディはどこか『イカレた』ようです。それでいてPOPであり、歌詞も所々ではっとするような魅力がある。

ジーザス!ジーザス!アーメン!神様!ひとつよろしくどうぞ
僕も少しヨゴレてる

「イカレたことを言う」人間であり、「僕も少しヨゴレてる」。この曲をドラッグと結びつける人もいるようですが、個人的にはそうでないことを願いたいです。だってそれじゃあ、あまりにも救いがなさすぎる。

6. Strawberry Shortcakes

このアルバムの中で一番好きな曲、「Strawberry Shortcakes」。夢の中を描写した歌詞にサイケなシンセサイザーが混ざり合い、トリップしたような心地よさがあります。

Key.ダイちゃんこと金澤ダイスケはやはりテクニックがありますね。サビ前など随所に光るメロディセンスもそうですが、縁の下の力持ちのように全体の雰囲気をうっすらと作り出すのは彼だからこそでしょう。アジカンのサポートメンバーとしてライブに出演していた時もGotchが彼の存在感を絶賛していた程です。さすが。

「フジフジ富士Q」にて”TRICERATOPS”Vo.和田が歌った音源です。GtVoとして見ると山内との共通点も多い和田ですが、この曲は和田にぴったりだったと思います。と言うよりも「フジフジ富士Q」の選曲はみんなぴったり過ぎる。フジファブリックへの愛の深さを感じます。

7. Surfer King

ホーンセクションとして”東京スカパラダイスオーケストラ”が参加している「Surfer King」。夏らしい熱狂とその中に潜む狂気を描いたような曲です。

歌詞を見ながら聴く曲と言うよりは聴こえてくる音に身をゆだねるような曲です。夏の海のような曲です。

サビの『フフフフフ…』が歌詞カードに書かれている辺り、強いこだわりと狂気を感じます。ただ、やはり驚くべきは志村のワードセンスです。

けらけら笑っちゃうぜ このコメディアン
ケセラセラ どうでもヨークシャテリア

僕が歌詞を聴いて天才的だと思ったのは「今夜はブギーバック」の『ほんのちょっと困ってるジューシーフルーツ 一言で言えばね』なのですが、それに近いものを感じるワードセンスです。天才と何とやらは紙一重です。

8. ロマネ

フジファブリックなりの「WE WILL ROCK YOU」、「ロマネ」。全パートがハモるメロディからもQUEENのエッセンスを感じます。

「WE~」のオマージュである力強いAメロからサビにかけての温かさが好きです。

この曲は志村が特に輝いていますね。サビの裏声の力強さ、Cメロの素朴さなどボーカルとして非常に魅力的です。

確かなことなどどこにもないな 教えてほしいテクノロジー
扉を開けたらそこでまた 切なくさせて

志村時代のフジファブリックがなぜ好きなのかと言えば、「自分と同じように悩み苦しんでいる人間が笑ったり、泣いたり、悟ったり、迷ったりする身近さ」を志村に感じるからです。彼の苦悩や寂しさが理解できるから、彼の曲の速度が自分にも心地いいんですよね。だからこそ彼の死がやるせない。本当に。

9. パッション・フルーツ

「Chocolate Panic」と同じく、「TEENAGER」を象徴するような曲、「パッション・フルーツ」。サイケというよりも夢のような浮遊感という表現が近いですね。

ワウを踏んだカッティングが心地いい曲です。Gt.山内のギタリストとしての幅広さを感じます。

夢の中で あやかしパッション
響き渡るファンファーレ

日本語には平仮名とカタカナ、漢字と3種類の文字が使われています。志村の日本語の美しさはこの3種類を巧みに使う所にあると思います。『あやかしパッション』の正体は分からないはずなのに、何故か印象的で納得のいく語感なんですよね。

10. 東京炎上<Album Mix>

以前までのフジファブリックなら罠になっていたはずの「東京炎上」。この曲が罠には思えなくなったこともフジファブリックの成長を感じます。

さあ ダバダバ ダバチ ダバダバダバ さあ ダバ ダバチテ
さあ この胸 焦がしてよ シャバダバ いっそ 悩まして

語感の良さの極みのようなサビ。書き出すとそのえぐみがよく分かります。バランス感覚が本当にいいんでしょう、この歌詞でもPOPだと感じられるそのセンスこそ志村の凄さです。

11. まばたき

唯一のバラード曲であり、Gt.山内作曲、「まばたき」。作詞:志村、作曲:山内という構成はフジファブリックの新しい一面を見せる上で最適だったのではないでしょうか。

アルバムの中に必ず入るバラード曲ですが、今回はエレキギターの冷たさと温かさが共生したサウンドになっています。左右交互にギターが聴こえるようにした編曲最高ですよね。

眠気の残った 時計の音
窓からそそぐ 淡い陽が
壁を染める 影を作る
僕は妙に ふてくされる

言葉少なく、聴き手に想像させるのは志村の歌詞でよくあることですが、この曲は特に限界まで引き算しています。歌詞と言うより詩に近い。どのような意味を見出すのか人によって様々にならざるを得ない曲でありながら、言葉だけが質感を持って胸に染み込んでいきます。

12. 星降る夜になったら

Key.金澤ダイスケと志村の共同作曲、「星降る夜になったら」。雰囲気は全く違いますが、『四季シリーズ』に似た情景描写あふれる曲です。『四季シリーズ』との違いは、曲全体の爽やかさです。『あの人』が登場しないことが大きい。

歌詞では『ホント、嘘』『真夏の午後、星降る夜』『夢、醒めた夢』と対照的な言葉が並び、夢と現実の境目が曖昧になっています。だからこそCメロが輝きます。

黙って見ている 落ちてくスーベニア
フィルムのような 景色がめくれた
そして気づいたんだ 僕は駆け出したんだ

からラスサビに向かう前向きさは、今までにないものではないでしょうか。このアルバムは過去に囚われていた志村が前向きになったアルバムだと思っています。

「富士五湖センター」での志村のMCはまさにその象徴です。

13. TEENAGER

表題曲であり、若さの象徴「TEENAGER」。このアルバムは完成度が高いと上述しましたが、それとは別に若さあふれるアルバムだと思っています。と言うのも、志村が前向きになったことで止まっていた時間が動き出したからです。

演奏も若々しくパワーコードを鳴らすギター、ルート弾きを基本としたベース、同じメロディを繰り返すキーボードという構成です。

夜には希望がいっぱい こっそり家から抜け出そう
おなかはコーラでいっぱい 朝まで聴くんだAC/DC

「TEENAGER」というタイトル通り若さ、というか幼さすら感じる歌詞です。また、さりげなく「星降る夜になったら」か『夜』『抜け出す』というキーワードが続いています。


まとめ

1stアルバムを「初期衝動と過去」、2ndアルバムを「理想を追った成長」と表現するとしたら、3rdアルバムは「若さと始まり」だと思います。フジファブリックらしさは共通するものがあると同時に、柔軟に変化し、それを包括する土台があるのです。