フジファブリック全曲解説「FAB FOX」

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「フジファブリック」

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先日、「フジファブリック」の記事ツイートに対していくつかリプを頂きました。僕が思うフジファブリックと誰かが思うそれは違うだろうに、それでも頂いたリプには温かい言葉ばかりでした。

自分の記事が読むに値するのだろうかと自問自答していたこともあり、心から励まされました。今後も皆さんにとって価値のある記事が書けるように頑張り続けたいです。

今日は”フジファブリック“2ndアルバム「FAB FOX」。

FAB FOX」全曲解説

Spotify

FAB FOX, an album by Fujifabric on Spotify…

2005年11月19日リリース。「フジファブリック」の頃に比べて自分たちの好きな音楽をやっている印象を受けるアルバムです。それが顕著に表れているのが、各パートの目立ち方ですね。ギターソロの音はもちろん、キーボードの音が前作よりも目立っています

1.モノノケハカランダ

MVが格好いい「モノノケハカランダ」。CD音源のギターの音が凄く好きです。ひたすらにギターが格好いい。どことなく「TAIFU」のような曲ですね。

このアルバム以降Gt.山内のギターはCD音源でもかなりメインのサウンドをしています。フジファブリックはギターソロのある曲が多いんですよね。昔ながらのロックンロールを愛した志村だからこそですね。

ちなみにこの曲は「ハカランダという木材で作られたギターが獣のように唸っている」という曲です。ハカランダとは60年代までのギターに使われていた木材であり、現在は入手が困難になっている木材です。楽器のヴィンテージ志向は大体ハカランダが原因。

コードEのマイナー調で陽気になってマイナーチェンジ

という歌詞が志村らしくて好きです。マイナー調で陽気になっちゃうんだ。

2. Sunny Morning

フジファブリックの中でも極めて明るく爽やかな曲ではないでしょか。「Sunny Morning」。「FAB FOX」はフジファの中でも明るい曲が多いと思いますが、この曲は別格ですね。

四角のフレーム 即席の手
しゃがんで移せばプロ気分

Aメロの語感が好きです。志村の歌詞は表現力にばかり注視しがちですが、独特の語感の良さも魅力だと思います。軽やか過ぎず、しかしリズムよく駆けるような語感の良さですね。

爽やかな朝にぴったりの音楽、のはずなのだけれど、僕は勝手にAM11:00位の曲だと思っています。というのも、志村が快活に朝から出かけるイメージがわかないんですよね。晴れた朝日を喜んでいると昼前になってしまったのではないのかな、なんて考えています。

3. 銀河 Album ver.

『四季シリーズ』冬の曲、「銀河」。曲に触れる前にMVに触れたい。何だその踊りは。今でこそ女の子が踊るMVも増えましたが、もう少し盛り上がりそうな踊りにしようとは思わなかったのでしょうか…。でも、「銀河」の不安定な陽気さにはマッチしています。「銀河は」踊れる曲だと思うのですが、踊るならこれしかないのでしょう。

U.F.Oの軌道に乗って あなたと逃避行
夜空の果てまで向かおう
U.F.Oの軌道に沿って 流れるメロディーと
夜空の果てまで向かおう

志村はすごくロマンチストで、だからこそ「フジファブリック」で何度も出てきた『あの人』を心の隅っこで大切に抱え込んでいたのではないのかなと思っています。『夜空の果てまで向かおう』なんて、どれほど深く想っていたのでしょう。

また、「銀河」はフジファブリックらしい曲だなと思います。リフやソロで印象的なフレーズを弾くギター、Bメロでうねるようなベース、要所で惹きつけられるキーボード、光るコーラスワーク…。何よりも、この不安定なようで格好良く、耳馴染みがないようで親しみやすいメロディ。

少し違えば壊れてしまうような危うさが魅力です。

Cメロの転調は象徴的ですよね。あと一歩で曲が崩れてしまうようなメロディから緩やかに着地する。どうしようもない素敵さです。

余談ですが、志村が心酔した”奥田民生”との「銀河」を見てほしい。きっと凄く喜んでいて、楽しんでいると思うのです。あと奥田民生のギターが格好いいです。アコギでやる曲じゃない。

4. 唇のソレ

志村が夢で見た曲を再現した「唇のソレ」。ギターがまぬけなメロディを弾いているはずなのに、バンド全体で聞くと格好いいんですよね。

この曲を聴くとやっぱりGt.山内はテクニックがあるなぁと思います。現フジファブリックではGtVo.としての役目を果たしているわけですが、やはり彼のギターの魅力は変わらないんですよね。フジファブリックになくてはならない存在。

きっとバンドメンバーが志村に抱いている気持ちは計り知れないと思います。その中でも、志村の代わりにボーカルを務めると決めた山内の心は一言では表せないほど複雑なものだとも思います。山内が作曲した曲についても完全解説したいです。

5. 地平線を越えて

残念ながら志村のいる音源ではなく、「フジフジ富士Q」にて斉藤和義が歌った音源です。「地平線を越えて」。ギターソロで斎藤と山内が向き合ったときに思わず笑みがこぼれている所、凄く好きです。

斉藤和義が歌うことからも分かるように、かなりギターが格好いい曲。ツインリードが格好いいですね。個人的にはツインリードに合わせたベースのメロディが好きです。

「FAB FOX」以降のフジファブリックの少し違えば壊れてしまうような危うさについてのバランス感は他のバンドには出せないものだと思います。アウトロの変拍子はまさにそれですね。これはきっと、自分たちの音楽をやるという覚悟から生まれたバランス感でしょう。

地平線を越えて先にさらに進んでいこう
皮肉じみた風が吹くのならヒラリかわして

という歌詞からも、彼らの覚悟を感じます。ここで言う『皮肉じみた風』とは世間の反応、風評であり、そんなものはヒラリとかわして進んでいくのだという覚悟を。

6. マリアとアマゾネス

こちらも先程と同様「フジフジ富士Q」でイエモンの吉井和哉が歌った音源です。コーラスワークやギターの格好良さに注目しがちですが、間奏のシンセサイザーのサウンドが最高ですね。サイケな曲調を形成している要因であるとともに、コーラスワークに入った時のカタルシスは素晴らしいです。

全体的に楽器が格好いい「FAB FOX」ですが、この曲もまたアルバムを象徴するような曲ですね。自分たちの好きな音楽を詰め合わせたからこそ、アルバムの流れと言うよりも、最高の一曲の寄せ集めに流れている血脈、フジファブリックらしさが生まれたのではないでしょうか。

7.  ベースボールは終わらない

残念ながらYouTubeに音源はありませんでした。イントロのリードとキーボードの掛け合いによりわくわくする雰囲気からバンド全体が揃う所凄く好きです。「ベースボールは終わらない」。

ベースのメロディが格好良くて好きですね。弾きたくなるメロディをしています。ベースのサウンドが中々癖のある音ですよね。ゴロゴロとしたような音で、主張しながらも抜け過ぎない不思議な音です。

ベースボールの音が鳴った 誰もギャラリーいないグラウンド
上空に君を映した

志村の情景描写には度々驚かされますが、この曲全体を通して情景が頭に浮かぶのは本当に凄いと思います。野球をした思い出なんてほとんどありませんが、どこか懐かしさすら感じてしまいます。

8. 雨のマーチ

こちらも残念ながらYouTubeに音源はありませんでした。この曲はないかなと何となく思ってました。罠と言えばまぁまぁ罠な曲。

「FAB FOX」の多くが分かりやすいロックサウンドであったり爽やかな曲であることからもかなり浮いている曲ですよね。

ただ、途中志村のボーカルだけになる部分など、聴いているとその世界観に取り込まれていくような不思議な魅力があります。不気味な小説だと思いながらもページをめくる手が止められないような感覚。

余談ですが、本・音楽・映画という3種類の媒体の中で本・映画がその作品内で完結しているのに対して、音楽は作品と現実がリンクしやすいように思います。やはり音楽だけは視覚からの情報がないため、音楽を聴きながら見ていた景色が結びつくんですよね。

「この曲を聴くと、昔考えていたことを思い出す」「この場所に来ると、当時聴いていたあの音楽を思い出す」というようなことがあるのは音楽ならではじゃないかな、と思います。平凡な景色が意味のあるものに変わるのは音楽の魔法です。

9. 水飴と綿飴

フジファブリックで初めてGt.山内が作曲をした「水飴と綿飴」。どことなく異世界にいるような曲調ですが、『水飴』『綿飴』という子どものような歌詞とアコースティックギターの優しいサウンドにより、どっちつかずで浮遊感のある曲になっています。

ほら水飴 混ぜたらあげるよ
love you、嘘だよ 綿飴をちょうだい

何より最高なのはこの歌詞です。前回の「フジファブリック」の記事で

志村は「君が好きという気持ちがあるとして、それを『君のことは嫌いじゃない』と表現してしまう」とインタビューで話していました。

と書きましたが、君が好きという気持ちの別表現がこの『love you、嘘だよ 綿飴をちょうだい』なのではないでしょうか。嘘でも主語を登場させないのがにくい。

10.

最初のガッツポーズの腕が細すぎる、「虹」。志村がこんなにも楽しそうにライブをしていたのかと思うと、志村の生前ライブを見たかった気持ちでいっぱいになります。各パートもみんな楽しそうで、フジファブリックはいいバンドだなと思う映像ですね。

ここからの3曲だけでもこのアルバムには価値があると思える位に好きな曲です。爽やかで聴きやすいキラーチューンですね。

この曲のポイントはキーボードだと思います。サビへの入り方はキーボードなしでは考えられないし、間奏の空に抜けていくようなメロディはたまりません。

遠く彼方へ 鳴らしてみたい
響け!世界が揺れる
言わなくてもいいことを言いたい
まわる!世界が笑う!

全体的に語感のいい歌詞が多いですが、『言わなくてもいいことを言いたい』という歌詞に志村らしさが詰まっていると思います。自分の気持ちを伝えようという人間が、こんなにも控えめな表現をするんです。

言葉にすることで変わってしまうこと。その変化で良くも悪くも崩れてしまう関係性、だとしても言いたくなるほどの「虹」なんですよね。

11. Birthday

優しい曲、「Birthday」。後述する「茜色の夕日」に見られる志村の孤独性に対して、この曲は孤独ではなくなった曲だと思います。

ミドルテンポで歩くような速度、それでいて弾むようなリズム。歌詞やサウンドから感じるぬくもりに触れると、きっとこの時志村は救われたんじゃないだろうかと思うのです。

昔なりたかった自分とはかなり違う現実を見てる よくある話かい?
だんだんきっと持ってる秘密も増えるし重くなってく
気がするけれども

今日は特別な夜さ 素敵な夜になりそうだ
みんなが待ってる 急いで帰ろう

志村の孤独性とは決して周りに人がいない一人ぼっちという意味ではなく、周囲の人間に恵まれているにも関わらず、ふとした時に自分は世界で一人なのだと感じること、そんな孤独性です。余程の幸せな人間でない限り誰しもそんな経験があるのではないでしょうか。

この孤独性は厄介で、周囲に人がいるから救われるものでもありません。ただ、周囲に人がいなければ、決して救われることはないのです。

志村の悩みは変わらないかもしれないが、それでも自分を待ってくれている『みんな』に対して『急いで帰ろう』と思えるようになった。それはまさに救いなのではないでしょうか。

12. 茜色の夕日

志村のMCも涙も、全てが詰まった「茜色の夕日」。このライブはきっと凄く大きな意味を持っていたんですよね。彼の気持ちを推し量ることはできないけれど、泣けてよかったなぁと思うのです。

志村が18歳の時に上京して作った曲であり、音楽を諦めようと思った時もこの曲があったからこそ続けられた。それ位志村にとって重要な曲であり、大切な曲です。

僕がフジファブリックで一番好きな曲を挙げろと言われたら、悩んだ末に「茜色の夕日」を選ぶと思います。シンプルなコード進行でありながらじんわりと刺さるこの音楽は、自分の音楽人生においても大きな意味を持っていると思うからです。

この曲もまた、忘れられない『あの人』に対しての曲だと思います。この曲の中にはどこにも「好き」等の気持ちを表す言葉はありません。しかし、聴いていれば否が応でも伝わる程の愛の深さを感じる。だからこそ、こんなにも温かく優しい曲なのでしょう。

僕じゃきっとできないな
本音を言うことも出来ないな
無責任でいいな ラララ そんなことを思ってしまった

志村の孤独性もそうですが、音楽でも何でも、志村はたくさんのことに苦しんでいたのではないかと思います。それはきっと志村の死にも関わっているのではないかと勘ぐってしまう。志村は苦しんでいた18歳から数年を経て救われたかもしれないけれど、それでも苦しみからは逃れられなかったのではないか。

今となっては想像することも難しいですが、思いを馳せずにはいられない。志村は死ぬべきではなかった。今さら言ったところでどうすることもできない、このやるせなさはフジファブリックと向き合う限りずっと付きまとうのでしょう。

志村の死後、彼が敬愛する”奥田民生”が「茜色の夕日」をカバーしました。カバーとは思えないほどに心を込めて大切に歌う姿、僕は奥田民生も好きです。

大切な人を想って歌う曲であり、それは必ずしも愛や恋ではないのだと、このカバーを聴いて気づきました。


まとめ

全曲解説を通じて、今まで自分が思っていた以上にフジファブリックは大きな存在なのだと気づかされました。「TEENAGER」の全曲解説もお楽しみに。