フジファブリック全曲解説「フジファブリック」

ryu’sへようこそ…オーナーのryuです。

「好きなバンドは何か?」と聞かれると、いつも答えに困ってしまいます。好きなバンドって言ったって、知らないバンドの名前挙げられても困るでしょう…?いっぱい名前言われても困るでしょう…?

けれど、「大切なバンドは何か?」と聞かれたら、きっと僕は「フジファブリック」と即答できる。

フジファブリック全曲解説、なんて仰々しく書いてしまったけれど、このアルバムのこの曲のこんな所が好きで、だからフジファブリックは素敵なんだと伝えられたらいいな。

今日は”フジファブリック“1stアルバム「フジファブリック」

「フジファブリック」全曲解説

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フジファブリック, an album by Fujifabric on Spotify…

2004年11月10日リリース。2019年の今聴いても色褪せない名曲ばかりであり、斬新さを感じるアルバムです。フジファブリックの代表曲『四季シリーズ』の曲のうち3曲が入っていることもあり、初心者にも聴かせやすいアルバムと思わせつつ一部罠がある。

1. 桜の季節<Album Ver.>

記念すべき第1曲であり、僕がフジファブリックで初めて聞いた曲。高校生の時に仲の良かった軽音部の後輩がこの曲を演奏していたんです。当時憧れていた先輩とその後輩が楽しそうにフジファブリックの話をしていて、会話に混ざりたくて聴き漁ったのがこのバンドとの出会いでした。

初めてVo.志村の歌を聴いた時の衝撃を今も覚えています。「なんて下手なんだろうこの人」と。綺麗な歌声の音楽ばかりを聴いていた僕にはどうにも受け入れがたいもので、それでも2人と話がしたくて聴いていました。

1日聴いて、2日聴いて、3日聴いた辺りからでしょうか。彼の歌声を聴いていると、不思議と落ち着くようになりました。

『四季シリーズ』春の曲、「桜の季節」。フジファブリックの中では分かりやすいメロディと構成で、それでいて志村らしい「語り過ぎない情景描写・心理描写」が魅力ですね。

桜の季節過ぎたら遠くの町に行くのかい?
桜のように舞い散ってしまうのならばやるせない

桜に対して美しいとも、散ってしまう切なさも触れずに、やるせなく感じているんです。どうしようもなく抗えない別れの季節が桜の季節だと。

その町にくりだしてみるのもいい
桜が枯れた頃 桜が枯れた頃

2度と会えないことを寂しいとも表現しないし、別れの言葉もありません。それでもこれは別れの曲なんですよね。

後に現在のGtVo.山内が作った曲「Gum」では志村正彦の姿がありありと描かれていますが、志村が

桜は寂しくなっちゃうから嫌い

だなんて強い口調で言っていたとあります。「桜の季節」への思い入れはとても大きかったのでしょう。手紙の相手は彼にとってどれほど大きな存在だったのでしょう。今後も何度か「志村の思い入れ」について触れます。

志村の歌を聴いていると、心臓の端に触れられたような感覚になります。ひりひりして、少し温かい感覚。

2. TAIFU

藤井フミヤが衝撃を受けた曲として有名な「TAIFU」。MVもあるのですがライブの方が好きですね。フジファブリックはCD音源とライブ音源で印象が異なることも多々あります。というのも楽器隊が格好いいことが要因。Gt.山内のギターソロ最高ですね。

イントロのベースといい、Ba.加藤のメロディセンスが好き。

虹色赤色黒色白!皆染まっているかのよう
飛び出せレディゴーで踊ろうぜだまらっしゃい

全体的に疾走感がある曲で、Bメロの『虹色赤色黒色白』の語感の良さも相まって盛り上がると思わせて、サビのメロディがあれである。その歌詞でメロディは下降するのかと言いたくなるが、その癖がたまらないんですよね。

最後の『だまらっしゃい』に志村らしさが詰まっていると思います。

3. 陽炎

『四季シリーズ』夏の曲、「陽炎」。ライブ音源のギターソロの音も最高なのだが、この淡々としたサウンドも好きなのでMVにしました。MVがスミス監督の割に落ち着いたMV。

志村の歌詞の魅力は、「思い出した時にだけ輝くような日常を鮮明に切り取っている」ことだと思います。その象徴のような曲がこの曲。聴くと感傷的になってしまう曲。

この曲で直接的に夏を表現する言葉は『陽炎』しかありませんが、夏を感じさせる言葉が並んでいます。誰の心にもあるような夏への郷愁感と、サビの疾走感がたまりません。

隣のノッポに借りたバットと 駄菓子屋にちょっとのお小遣い持って行こう
さんざん悩んで時間が経ったら 雲行きが変わってポツリと降ってくる
肩落として帰った

志村の歌詞を見ていると、彼の書いた文章を読んでみたくなってしまって「東京、音楽、ロックンロール」という彼のメジャーデビュー以降の5年間を綴った日記とインタビューをまとめた本を買いました。

買ってからもう数年になるでしょうか。僕は最初の数ページで耐えられなくなって以来、この本を読めていません。読む覚悟ができない。「MUSIC」まで全曲解説することが出来れば読めるでしょうか。

「陽炎」の中の『あの人』は志村の心から消えることはないんだろうなと思います。志村の歌詞の魅力は、「思い出した時にだけ輝くような日常を鮮明に切り取っている」ことだと言いましたが、それはきっと志村の中の日常が本当に鮮明だったからではないでしょうか。そこに嘘がないから、こんなにも刺さる。

4. 追ってけ追ってけ

罠その1。「追ってけ追ってけ」。ライブ音源はややテンポが速いのでまだ聴きやすい。

変拍子で、歌詞は繰り返しに次ぐ繰り返し。初見じゃ中々好きにはならないであろう曲です。楽器隊のサウンドなんか凄く格好いいし、コーラスワークにもフジファブリックらしさは詰まっているけれども。けれどもです。

ゆらゆら揺れる煙草のけむり
黙った二人喫茶店の隅っこ
飛び出すのは時間の問題さ

の辺りなんてすごくもどかしくてたまらなくなる。聴いていくうちに好きになっていく曲という意味ではフジファブリックらしいのかもしれません。罠だけど。

5. 打上げ花火

罠その2。「打上げ花火」。これは間違いなくライブ音源が好きです。間奏のギターソロと、16分音符の緊張感はライブでこそ映えますね。

罠と言うには分かりやすく格好いい曲ですが、間奏が長いんですよね…。これはCD音源よりもライブ音源聴くべきだし、何ならライブで演奏するべき。16分が決まった時の感覚はたまらないです。

6. TOKYO MIDNIGHT

罠その3。「TOKYO MIDNIGHT」。残念ながらYouTubeに音源はありませんでした。

正直僕も早送りしちゃう時ある位の罠です。1曲の中で曲調どれだけ変わるんだと。歌詞は一体何だと。さっきまでの褒め言葉を丸ごと撤回したくなる『パジャマでパヤパヤ』。

ただベースが格好いいんですよね。ベースを演奏する身としてはたまらない曲ではあるんですが、それを加味しても罠。いつかは好きになるのだろうか。

7.

バンドサウンドから一転、2本のアコースティックギターが美しい「花」。こちらもYouTubeにはなかったので、SpotifyPremiumになってもらうしかないですね…。

志村の歌声は批判されることも多く、僕のように最初は受け入れられない人も多いと思います。ただ、この「花」では良い歌声をしていると思うんですよね。

月と入れ替わり 沈みゆく夕日に
遠吠えの犬の その意味は無かった

という辺りでは彼の歌声特有の心臓の端に触れられたような感覚が際立ちます。直接訴えかけられているような歌声はバラードの「花」でひと際輝いています。

8. サボテンレコード

このアルバムの中で一番好きな曲、「サボテンレコード」。

ギター2人の掛け合い、Aメロの後ろで動くベースのメロディ、アウトロを彩るシンセサイザーと、メンバー全員が輝いています。

Aメロのおどろおどろしい雰囲気に乗る志村らしさ満載の歌詞、サビに入った瞬間に光が差し込み視界は開けて走り出すような疾走感がたまりません。

それはボサノバだったり ジャズに変えては まったり
リズム チキチキ ドン チキチキ ドンドコ

この歌詞の韻の踏み方と、それを台無しにするような『リズムチキチキドン~』がたまらなく好きです。これがあるからこそ

ならば全てを捨てて あなたを連れて行こう
今夜荷物まとめて あなたを連れて行こう

というサビのカタルシスが生まれます。カタルシスが最速過ぎる。

志村曰くこの曲は作るつもりがなかったらしいですが、作ってくれてありがとうと心から言いたい。ありがとうございます。

9. 赤黄色の金木犀

『四季シリーズ』秋の曲、「赤黄色の金木犀」。金木犀の香りなんて意識したこともなかったのに、この曲を聴いてから分かるようになりました。金木犀の香りが好きです。

この曲については歌詞に一文字も無駄がないとおもうんですよね。全文書き出したい位に好きです。情景描写ここに至り。

赤黄色の金木犀の香りがしてたまらなくなって
何故か無駄に胸が騒いでしまう帰り道
期待外れな程感傷的にはなりきれず
目を閉じるたびにあの日の言葉が消えてゆく

Cメロの熱量とは裏腹に冷めた歌詞が好きで、歌う時にはいつも力が入ってしまいます。

志村は「君が好きという気持ちがあるとして、それを『君のことは嫌いじゃない』と表現してしまう」とインタビューで話していました。直接的な描写が少ないのも彼の特徴であり魅力ですが、にも関わらず情景がありありと浮かぶのは不思議です。

サビでの疾走感、カタルシスという意味では「サボテンレコード」以上に疾走感のある曲ですね。静と動が繰り返されることは音楽でよくありますが、この曲は静であって静ではないんです。平静を装っても、心は無駄に騒いでしまう。そんな曲です。

10. 夜汽車

家にいるとき一人でよく弾き語りをしてしまう「夜汽車」。イントロやギターソロのシンプルなメロディが凄く綺麗ですよね。弾き語りカバー音源が少ないことが不思議。

窓辺にほおづえをついて寝息を立てる
あなたの髪が風に揺れる 髪が風に揺れる
夜汽車が峠を越える頃そっと
静かにあなたに本当のことを言おう

この歌詞が凄く好きです。志村の優しさと不器用さが現れているなと思ってしまいます。

フジファブリックを好きになったのは志村正彦という人間が好きになったからなんですよね。僕は生前の志村を知らないし、死後にフジファブリックを知った人間です。それでも、彼という存在を知って欲しいし、フジファブリックというバンドを知って欲しい。

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